一般にブラキシズムはストレスによる生体応答のひとつとされ、そのストレスを緩和することがブラキシズムへの治療となる場合がある。しかし、ブラキシズムという行為がストレスを緩和しているという考え方もある。また、ブラキシズムに対する臨床的評価は、口腔内の環境を増悪するものとして位置づけされ、その意義はあいまいで統一した見解はない。そこでブラキシズムの中でもクレンチングに着目し、クレンチングがストレスを緩和することを明らかにすることを目的に研究を行った。ストレス状態の評価として内分泌系の指標には唾液中のコルチゾール濃度を測定し、自律神経系の指標には精神性発汗量および皮膚血流量の計測を行う。また、クレンチングの評価には筋活動量を計測する。 今年はブラキシストにおけるクレンチングのストレス緩和について明らかにするために、 被験者を非就眠時ブラキシズムの検知基準により、非就眠時ブラキシストと非就眠時ブラキシズムを認めない2群に分けた。実験は、はじめに被験者を恒温室内にて20分間安静に保った後、ストレス負荷として暗算を10分間行わせた。その後、20分間の安静を保ち実験終了とした。10分間のストレス負荷の間、各群おいて、自由にクレンチングを行わせた場合とクレンチングを禁止した場合の2条件について実験を行った。その結果、非就眠時ブラキシストにおいてストレス下にて行うクレンチングは交感神経系の活動を抑制し、ストレス状態を緩和することが示唆された。また、クレンチングの程度は、筋電計の計測によると最大噛み締めの約27%であった。
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