研究概要 |
近年, 全身機能に及ぼす咀嚼器官の重要性に関する事実が明らかにされてきたが、その認識は十分ではない。その中でもストレスと顎口腔系との関係については、いくつかの報告があるがいまだ不明な点が多い。一般にブラキシズムはストレスによる生体応答のひとつとされ、そのストレスを緩和することがブラキシズムへの治療となる場合がある。しかし、ブラキシズムという行為がストレスを緩和しているという考え方もある。また、ブラキシズムに対する臨床的評価は、口腔内の環境を増悪するものとして位置づけされ、その意義はあいまいで統一した見解はない。そこでパラファンクションであるブラキシズムの中でもクレンチングに着目し、クレンチングがストレスを緩和することを明らかにすることを目的に研究を行った。ストレス状態の評価として内分泌系の指標である唾液中のコルチゾール濃度を測定した。また、クレンチングの評価には筋活動量を計測した。 被験者にはストレス負荷として計算問題を20分間行わせ、その後、クレンチングを行わせた。クレンチングの条件は、強度を「弱い力」および「中等度の力」の2条件とし、5秒毎のクレンチングと安静の繰り返しを3分間行ない、これを3回繰り返した。これらの各条件は、同一被験者に対してランダムに実験日をかえて行った。 唾液中コルチゾール濃度を分析したところ、クレンチングはストレス状態を緩和することが明らかとなった。なかでも、「弱い力のクレンチング」の場合にその効果は大きいことが明らかになった。
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