本研究では、機能性と生体適合性に優れ、三次元構造を有するスキャフォールド体を作製するため、ポリ乳酸(PLA)ファイバーとハイドロキシアパタイト(HAp)の複合体(PLA/HAp複合体)を作製し、その特性評価を行なった。まずHAp粉末とブタ皮膚由来の1%TypeIコラーゲン溶液(pH=3.0)を重量比1:2で混合し、pH緩衝液(pH=7.4)を10%添加してスラリーを調製後、三次元織物形態のPLAファイバーシートをスラリーに含浸させた。さらに37℃でゲル化、-80℃で48時間予備凍結した後、真空中において-52℃で48時間凍結乾燥を行なうことで、PLAファイバーとHApとを複合化した、シート状のPLA/HAp複合体を得た。作製したPLA/HAp複合体について電子顕微鏡により観察した結果、PLAファイバー表面にコラーゲンがバインダとなってHApが結合している様子が確認できた。またPLA/HAp複合体表面の薄膜X線回折の結果、アパタイトを示すピークを確認した。生体内での挙動を明らかにするためにPLA/HAp複合体を擬似体液(ハンクス溶液、pH=7.4、37℃)に7日間浸漬した結果、PLA1HAp複合体の表面にはコントロール(HApを複合化していないPLAファイバー単体)に比べて、より多くのアパタイト結晶が生成していた。また骨芽細胞様細胞(MC3T3-EI)播種1日後のPLA/HAp複合体表面にはコントロールに比べ、細胞が大きく伸展している様子が確認でき、細胞初期付着性に優れていた。以上のことから、本研究において凍結乾燥法を応用することで、機能性に優れる生体吸収性のPLAファイバーと生体活性に優れるハイドロキシアパタイトとを複合化したPLA/HAD複合体は、新規スキャフォールド体として有用であることが示唆された.
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