研究概要 |
近年のマウスガードの使用法として、顎口腔の外傷の予防・軽減を目的以外に,ウエイトトレーニング(レジスタンストレーニング)においてMGを好んで使用しているアスリートが多くみられる.しかしながら,その好まれる理由は明らかにされていない.そこで,平成19年度はヒトが自然な状況下で,体幹の強い筋力を発揮した場合,下顎はどのような動態となるのか調査した。体幹の伸展・屈曲運動計測を対象として,多用途筋機能評価訓練装置BIODEX SYSTEM3(BDX-3,BIODEX社)を使用した。顆頭位および切歯点の計測は3D超音波ナビゲーター(ARCUS digma, KAVO EWL)を使用し,FH平面を基準平面とした。測定顆頭点は全運動軸点とし,体幹伸展・屈曲運動時の矢状面における前後,上下方向の全運動軸点を基準点とした最大移動量を算出した。検定の結果,体幹伸展・屈曲運動時の顆頭点変位量は後方および上方移動量は前方および下方移動量と比較して有意に大きかった。切歯点は体幹伸展・屈曲運動時に開口している傾向を示した。体幹の筋力を発揮する場面においては,顆頭は後上方へ変位,切歯点の開口を示した。これらのことから,下顎は体幹の筋力発揮時,咬頭嵌合位で固定されていないことが示唆された。つまり,下顎は体幹の筋力を発揮するのに都合良い位置に変位するといえる。このことは,これまで筋力を発揮する時にヒトは噛みしめるといわれていた定説と異なる結果であり,今後の研究の発展に大きく影響を与えると思われる。
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