歯胚組織と歯細胞の分離のたあに、生後5日目もしくは6日目の新生仔マウスの顎骨から、第1臼歯と第2臼歯の歯胚を摘出した。これら歯胚を15%FBS添加DMEM/F12倍地にて静置培養を行い、歯胚由来の種々の細胞の分離・培養を試みた。培養1〜2週間後には、敷石状の形態を有する上皮細胞様細胞と紡錘状の線維芽細胞様細胞がoutgrowthして活発に増殖を行っていた。 マウス由来の歯胚細胞の分離・培養と共に、ヒト抜去歯の歯根膜からの細胞分離も行っている。ヒト親知らずの抜去歯歯根から歯根膜組織を採取し、静置培養することでoutgrowthしてくる細胞を培養した。ヒト歯根膜由来の細胞もマウス歯胚由来細胞と同様に、敷石状の形態を有する上皮細胞様細胞と紡錘状の線維芽細胞様細胞がoutgrowthしており、活発に増殖を開始した。しかし、抜去歯ごとの個体差も見られ、種々の器官培養法を試みるために十分な細胞数を得るためには、次年度も引き続いて継代培養を繰り返すと共に、継続的にヒト抜去歯を入手する必要を感じている。 一方、Wiley-Blackwell社の科学誌Human Cellの依頼により、昨年8月に歯の再生に関する総説論文を発表した。この論文では、現在までに報告されている歯の再生研究をレビューして、従来法の抱える課題について言及し、われわれの目指している"Test-tube teeth"(試験管の歯)作製のためのアプローチについて提起した。さらに昨年、Nova Science Publishersの依頼により、歯の再生の最終ゴールとも言える"Tooth/periodontal organ engineering"(歯・歯周組織の器官再生)という、われわれの志向する全く新しいコンセプトをCommentaryとして次年度に発表する予定である。
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