研究課題
我々は、咬合異常モデルを用いた研究において、血中ストレスホルモンの増加、記憶の司令塔である海馬の神経細胞死、さらに作業記憶が悪くなることを世界に先駆けて報告し、多くの関心を得てきたこの事実は、咬合咀嚼(チューイング)機能減退がストレッサーとして作動し、記憶学習が悪くなることを意味している。また、湾岸戦争で戦闘に突入した際にガムを噛んでいた米軍兵士に海馬萎縮がほとんどなく、噛まなかった兵士に著しい萎縮が認められたことと符号する。したがって、チューイングとストレスのクロストーク機構をヒトにおいて脳科学的に解明することが今後の重要な課題である。そこで本研究では、fMRIを用い、チューイングによる脳ストレス抑制回路の賦活化について研究し、ストレス解消のチューイング関連機構を脳科学的に検索した。その結果、ストレス刺激により大脳辺縁系の扁桃体のBOLDシグナルが増加し、この増加はガムチューイングを行うと減少することが分かった。同様の変化は、血中のストレス関連物質(アドレナリン、ノルアドレナリン)および唾液クロモグラニンAにおいても起こった。この結果は、チューイング刺激は三叉神経を介して、情報を視床・大脳感覚野・連合野・扁桃体、あるいは直接的に扁桃体に入力し、チューイングによるストレス緩和作用は大脳辺縁系の神経回路網を通して発現することを示唆している。
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Novel Trends in Brain Science (Springer, Tokyo)
ページ: 99-113
ページ: 115-129
http://www.kdcnet.ac.jp/college/HPD/