研究概要 |
平成19年度の結果から得られた刺激条件で、歯肉癌由来細胞株のCa9-22を用いて、(1) poly-IC刺激、(2) RIG-I遺伝子導入、(3) RIG-I遺伝子導入+poly-IC刺激の3群の比較についてcDNAマイクロアレイを用いて行い、poly-IC刺激ならびにRIG-I遺伝子導入によるCa9-22での遺伝子発現における抗腫瘍効果を検討した。 マイクロアレイで得られた結果をもとに特徴的な発現パターンを示す遺伝子群の抽出を行うために、各群の比較のいずれかで発現変動を示した4,376遺伝子を対象に、階層クラスタリングを実施した。また、RIG-I遺伝子導入および二本鎖RNA処理の影響の分子レベルでの理解を目的として、発現変動遺伝子に関するパスウェイの抽出を行った。 解析の結果、poly-IC刺激では、サイクリンファミリー、CDKファミリーおよびCDC25ファミリーが発現減少する一方、細胞周期停止に関わる遺伝子の発現上昇が認められた。これらから細胞周期のG1/S期およびG2/M期進行の抑制が示唆された。 RIG-I遺伝子導入群では、サイクリンファミリー、CDKファミリーおよびCDC25ファミリーに発現減少が見られる点はpoly-IC処理の場合と共通している。また、S期移行に関連する転写因子の発現減少および細胞周期停止に関わる遺伝子の発現上昇が認められた。これによりRIG処理によってもG1/S期およびG2/M期進行が抑制されることが推測された。 以上の結果をもとに発現変動遺伝子に対してRT-PCRおよびウエスタンブロッティングを施行し対照群と比較検討した。その結果、Ca9-22細胞株の細胞周期に影響を及ぼすものの中でもRIG-Iを介した経路と介さない経路があることが明らかとなった。
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