我々は既にUP抗体を作成し、口腔扁平上皮癌(OSCC)で免疫染色を施行し局在は細胞壁・細胞膜であり、浸潤部先端の癌細胞で特に強く発現していることを明らかにした。又OSCCにおいて、UPの発現が増強していると共にその発現レベルが頚部リンパ節転移および予後と関連していることを報告した(Cancer 2002)。乳癌においても同様の報告を行った(Int J Cancer 2002)。本研究の前年度実績概容として、 ・口腔扁平上皮癌細胞株を用いてUP高発現癌細胞株の樹立を行った。(p53のWild-type及びMutant-typeの癌細胞株について、各々UP高発現株を樹立した) ・その増殖能についてコントロール細胞株と比較した所、有意に細胞増殖レベルの上昇が認められた。本年度研究内容として、 (1) ヌードマウスに移植可能な口腔癌細胞株においてもUP高発現株を樹立した。 (2) UP高発現口腔癌株ではp53の発現レベルがmRNA及び蛋白レベルで共に低下していることが確認された。→UPの過剰発現により癌細胞増殖活性が高まること、UPを介在したp53の発現抑制が、その分子機構として機能している可能性が示唆された。 今後、これらUP高発現株を用いて、 ・初発転移までの期間および転移巣の増殖速度を評価 ・UPの発現をRNAiにて抑制した場合の、抗腫瘍効果、転移制御を検討する予定である。
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