研究概要 |
最近、重症な造血器疾患の治療として、造血幹細胞移植の適応が増加し、患者の移植後の生存率が上昇している。しかし、移植前から移植後の口腔管理については明確にされておらず、統一された見解は得られていない。そこで、造血幹細胞移植患者の移植前から移植後の長期にわたる口腔管理基準を確立することを本研究の目的とした。すでにわれわれが報告した移植前歯科管理プロトコールに基づき(Yamagata K, Bone Marrow Transplant 38:237-42,2006.)、平成19年度は成人の造血幹細胞移植前の口腔管理を19例に行った。そのうち移植を行った症例は11例(男性8例、女性3例)で平均年齢38.6歳であった。原疾患は悪性リンパ腫3例、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫各2例、その他4例であった。移植前管理を行った結果、重篤な歯性感染症は生じなかった。また、慢性GVHDを認めた症例は6例で、現在口腔管理中である。小児の症例は16例(男児10例、女児6例)で平均年齢8.5歳であった。原疾患は急性リンパ性白血病9例、再生不良性貧血2例、その他5例で、全例で移植が完了し、移植前後の免疫抑制状態で歯性感染症を生じた症例は認めなかった。これらの患者のうち慢性GVHDを生じた患者は5例で、現在経過観察中である。 来年度以降も症例を蓄積し、移植前の管理に関して詳細な検討を行うとともに、移植後の口腔管理、特に慢性GVHDの病態および治療に関して研究を進めていく予定である。
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