研究概要 |
最近、造血器疾患の治療として造血幹細胞移植の適応が増加し、患者の移植後の生存率が上昇している。しかし、移植前から移植後の口腔管理については明確にされておらず、統一された見解は得られていない。そこで、造血幹細胞移植患者の移植前から移植後の長期にわたる口腔管理基準を確立することを本研究の目的とした。すでにわれわれが報告した移植前歯科管理プロトコールに基づき(Yamagata K, Bone Marrow Transplant 38 : 237-42, 2006.)、平成20年度までには成人で口腔管理後に造血幹細胞移植を行った症例は84例(男性44例、女性40例)で平均年齢39.7歳であった。原疾患は悪性リンパ腫24例、慢性骨髄性白血病18例、急性骨髄性白血病15例、急性リンパ性白血病12例、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群各5例、その他5例であった。移植の種類は骨髄移植51例、末梢血幹細胞移植30例、臍帯血移植3例であった。移植前管理を行った結果、歯性感染症は生じなかった。小児の症例は28例(男児18例、女児10例)で平均年齢8.1歳であった。原疾患は急性リンパ性白血病15例、再生不良性貧血4例、その他9例で、全例で移植が完了し、移植前後の免疫抑制状態で歯性感染症を生じた症例は認めなかった。これらの患者のうち慢性GVHDを生じた患者は7例で、現在経過観察中である。 移植後の口腔管理、特に慢性GVHDの病態および治療に関して研究を進めていく予定であったが、症例が少なくいため、来年度以降に継続して調査していく予定である。
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