研究方法:薬液0.4mlを浸透させた通電用シートを右前腕に貼付し通電を行う。通電用シートは通電部と対極が一体型となっている。既製の直流通電装置を用い、通電条件は1.5mA×10分とした。使用薬液は1/8万エピネフリン添加(8E群)、1/16万エピネフリン添加2%(16E群)、1/32万エピネフリン添加(32E群)、エピネフリン無添加(EF群)の2%リドカインとし、対照として生理食塩水(S群)を用いた。麻酔の評価はprick testによる疼痛閾値とvon frey testによる触覚・疼痛閾値の測定により評価した。通電後直ちにデバイスを除去し、通電直後より10分間隔で60分後まで各閾値を測定し、局所麻酔効果作用時間に関し検討した。 結果:prick testでは、8E群と16E群は60分後まで、32E群は30分まで、EF群は10分後まで痛覚閾値の上昇がみられた。von Frey testでは、8E群と16E群のみ50分以上の痛覚触覚閾値の上昇が見られた。 考察:Prick testによる除痛効果は通電直後より認められ、エピネフリン濃度依存性に作用時間は延長した。一方von Frey testによる疼痛閾値には8E群と16E群以外は術前との差は見られなかった。von Frey testによる痛覚閾値の測定では深部感覚や触圧覚も同時に刺激されたため8E・16E群以外では麻酔効果の延長がみられないと考えた。また局所麻酔薬の浸透が浅かったため触覚や深部知覚が十分に麻酔されなかった可能性も考えられた。実際の臨床でも外科処置などはvon frey testと同様に痛覚と同時に触圧覚も刺激するため、今回の実験では麻酔作用時間を延長させるには1/16万以上のエピネフリン濃度が必要なことが判明し、今後口腔粘膜への応用の際に必要なエピネフリン濃度の参考となった。
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