イオントフォレーシス(IOP)は現在ペインクリニック領域などでも応用されている。一般には直流が用いられるが、大量・長時間の通電は熱傷や疼痛などにより制限されている。そこで我々は交流を用いた薬剤のIOP(AC-IOP)を試作装置を用いて検討した。 方法:本研究は東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の承認を得て行った。対象はインフォームドコンセントを得た健康成人30人とし、AC-IOPによる局所麻酔薬の麻酔効果に及ぼすDuty cycleの影響を調べた。対象の前腕部に薬液0.4mlを含む通電用電極(トランスキュー・テクノロジーズ社製)を貼付し、駆動源にDuty cycleを変化可能な試作パルス電源装置(トランスキュー・テクノロジーズ社製)を用いた。通電条件は1mAの定電流とし、陽性成分の電流と時間の積が10mA*minとなる様通電時間を調節した。使用薬液は2%リドカインと、生理食塩水を用い、duty cycleは100%・80%・60%とした。対照としては通電しないリドカインと生理食塩水を用いた。通電直後より10分毎40分後までvon Frey testにより知覚・痛覚閾値を測定・比較した。 結果・考察:一方von Frey testによる触覚・痛覚閾値はduty cycle延長に伴い有意に上昇した。麻酔効果は交流矩形波の陽性成分に対応することが示唆された。また、現在用いている電極には不織布が用いられているが、皮膚や口腔内など生体への適合性密着性の向上のため、東京工業大学と共同でアルギン酸を用いた薬剤担持型電極を試作した。その性能をin vitroで検討した結果、交流矩形波による薬液の送達が確認された。本研究で検討したアルギン酸電極はそれまでの電極と異なり、金属である電極とアルギン酸が化学的に結合しており、高い接着性および通電安定性を有している。このアルギン酸電極の作成法および使用法等に関し、東京工業大学との合同特許を申請中である
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