研究概要 |
本研究は, 神経因性疼痛に適用されるACイオントフォレーシスの鎮痛効果には中枢変化も関与するのかを明らかにするために行われた。本年度は, 眼窩下神経Chronic constriction injury(CCI)モデルラットを用い, 行動学的実験を行った。CCIが成功したラット20匹をコントロール群, リドカイン貼付群, 生食IOP群, リドカインIOP群の4群に分け, それぞれの処置後に、von Frey Filamentにより、逃避行動閾値を測定した。 その結果, ACイオントフォレーシス直後は、コントロール群を除く3群全てに, 刺激側においてACIOP直後の逃避行動閾値の上昇を認めた。リドカインIOP群では, 他の群より逃避行動閾値の上昇が継続し, 有意差は60分後まで認められた。しかし、4%リドカインを使用したAC IOPの単回使用では, 数日間の効果の持続は認められなかった。 以上より、生食IOP群でも、刺激直後に逃避行動閾値の上昇を認めたため、電気刺激のみであっても、反応の抑制が得られることが明らかになった。また、リドカインIOP群では他の群より効果が継続したことから, 局所麻酔薬と電気刺激双方が利用された場合は、どちらかの単独使用より, 効果的に刺激に対する反応の抑制が期待できるものと考える。 現在までは, ACイオントフォレーシスの効果は, 主に局所麻酔の薬理作用によって発揮されると考えられていた。しかし本研究の結果より, 電気刺激も鎮痛に寄与している可能性が示唆された。ACイオントフォレーシスの鎮痛機序に新たな可能性を見出したことに, この研究の重要性があると考える。
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