【目的】新潟大学では2000年より培養複合口腔粘膜(EVPOME)の臨床応用を開始し、米国ミシガン大学、神戸、富山との共同研究も行い、現在までに100例以上の症例を経験した。しかし、従来の方法では移植材作製のための組織片採取から手術までの期間が3〜4週間に限定され、また複数回の手術にも対応できなかった。この問題点解決のために凍結培養細胞によるEVPOME作成を検討し、in vitroでは通常とほぼ同様の性状のEVPOME作成に成功した。EVPOME移植後の治癒機転の解明にはこれまでマウス口腔内移植モデルを開発し評価しているが、このモデルはヒト口腔粘膜細胞によるEVPOMEをマウスに移植する「異種移植」であり、凍結培養上皮細胞の動態を解明するには不十分なモデルであると考えられた。そのため今回はまず同種移植モデル「ラット口腔内移植モデル」の開発を行った。【材料と方法】12週齢ウィスター系ラットの頬粘膜を切除、細胞を単離、それを培養してEVPOMEを作成する群と細胞を6か月間凍結する群にわけた。さらにラット右側頬粘膜に15mm^2の粘膜欠損創を作成し、非凍結細胞によるEVPOMEをシリコン膜で被覆し移植した。対象群はEVPOMEの足場であるAlloDermを移植した。移植後5日目でシリコン膜を除去し、5、7日で移植部を切除し観察した。【結果】マウス移植モデルでは移植後5日目では重層化し連続したEVPOME上皮が認められたが、今回のラットモデルではEVPOMEの生着は良好だったが上皮は部分的に脱落する傾向にあった。【考察および今後の展望】ラット細胞はヒト細胞よりAlloDermとの接着が弱いと思われ、今後はEVPOME作成方法や移植方法を改良した後、凍結細胞によるEVPOME移植を行い、非凍結細胞によるEVPOME移植群、およびAlloDerm移植群とで比較検討する予定である。
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