研究課題
前年度は骨補填材料を家兎顎骨に応用した際の経時的変化について形態的・組織学的評価を行い興味深い知見を得たが、今年度は骨補填材料が骨組織に置換していくメカニズムを更に詳細に解析するべく、免疫組織化学的評価を加えて実施した。材料はα-TCP(α型リン酸三カルシウム)製剤を使用し、実験グループをα-TCP群およびコントロール群に大別、家兎の上顎洞粘膜を圧下させた上で鼻骨よりチタン製インプラント体を植立し、骨面と上顎洞粘膜との隙間に露出したインプラント体周囲にα-TCP製剤を充填(コントロール群はコラーゲンスポンジを充填)、術後4、12、24週で屠殺、評価を行ったのは前年度と同様である。これまでの研究より、当該部位における強い骨誘導機転の存在が示唆されたことから、免疫組織化学的評価はBMP(Bone Morphogenetic Protein:骨誘導タンパク)について行うこととし、特に抗BMP-2モノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的染色を実施した。その結果、α-TCP塊に近接した上顎洞粘膜組織において、期間を通して多数のBMP-2陽性細胞が観察され、陽性細胞数は術後4、12週ではコントロール群との有意差が認められた(P<0.05)。これは形態的・組織学的に旺盛な新生骨形成がみられる時期と一致していることから、早期より同部位にBMP-2が特異的に発現し、結合組織中の前駆細胞を骨芽細胞等に分化させることなどにより、骨形成が強く誘導されていると考えられた。以上の結果は、歯科インプラント治療、特に上顎臼歯欠損部の骨量が不足する場合の上顎洞底挙上術(サイナスリフト)におけるα-TCP製剤の有用性を示唆するものであると考えられた。
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