顎下腺同種他家移植において、神経吻合を行ったもの及び行わなかったものを作成し、移植唾液腺を機能的・組織学的に比較検討した。評価方法として、(1)安静時の唾液分泌量の測定、(2)味覚刺激による唾液分泌量の測定、(3)神経刺激による唾液分泌量の測定、(4)唾液腺造影、(5)病理組織学的検索(HE染色、PAS染色、免疫染色)などを術後定期的におこなう予定であったが、現段階においては、モデルの作成および術後1ケ月目までの評価しか行えなかった。 神経吻合をおこなったもの、おこなわなかったもの、いずれも移植は成功した。神経の吻合も可能であった。また安静時の唾液分泌量を測定するために、口腔外に唾液瘻を作成することも可能であった。 また、両者ともにムスカリン作動薬(ピロカルピン)を用いなくても、唾液の分泌を認めることができ、口腔外の唾液瘻から意識下に微量の唾液分泌を認めることができた。その量は0.04〜0.06m1/5minと、コントロール(非移植側の唾液腺)からの分泌量である1.91m1/5minと比較して微量であったが、今後、術後の神経再生が見込まれるまで長期観察を行えば、神経回復とともに分泌量が増加すると思われる。 なお、現段階では移植神経の再生はまだなされていないと判断できることから、ほかの味覚刺激や電気刺激での分泌量の評価はおこなっていないが、今後長期観察を行い、安静時の分泌量が増加するころを目安に他の評価も行っていく予定である。
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