マウスで単一の癌遺伝子を分子標的にするのみで骨肉腫等の難治性悪性腫瘍の分化誘導による治癒が観察され、癌遺伝子への依存が癌のアキレス腱となることが示された。ヒトでも慢性骨髄性白血病において癌遺伝子として機能しているBcr-Ablを分子標的グリベックはBcr-Ab1以外にも c-Kit、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の活性阻害効果を有しており、PDGFRに対する阻害効果が最も強いことが知られている。したがって、本研究では口腔癌におけるPDGFおよびPDGFRの発現と口腔癌に対するグリベックの抗腫瘍活性の有無について明らかにする。まず、ヒト不死化角化上皮細胞株(1株)と培養ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(10株)よりtotalRNAおよび蛋白質を抽出し、それぞれマイクロアレイ解析、Westernblot法にてPDGFRBの発現を検討したところ、口腔扁平上皮細胞株3株(30%)にPDGFRBの高発現が認められた。しかしながら、PDGFRBの高発現細胞株ではその恒常的なリン酸化は認められなかった。すなわち、口腔.次に、口腔扁平上皮癌組織を用いた免疫組織化学染色による検討では11例中2例に強発現が認められ、扁平上皮癌の一亜型として位置付けられている紡錘細胞癌に著明な発現元進が認められた。さらに、グリベックの癌細胞増殖に与える影響を検討したところ、PDGFRB低発現細胞株を含む全ての癌細胞に対して細胞増殖抑制効果を示した。以上の結果より、グリベッグはPDGFRBの発現量に関係なく抗腫瘍活性を発揮する可能性が示唆された。
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