【目的】これまで我々は株化口腔扁平上皮癌(OSC)細胞および口腔扁平上皮癌患者の生検材料を用いて、EphA/ephrinAおよびEphB/ephrinBの発現について種々の検討を行ってきた。その中で、正常口腔粘膜上皮と比較して口腔扁平上皮癌ではEphrinB2が有意に高発現されていること、さらには、細胞密度が高くなるにつれてEphrinB2およびその受容体であるEphB2、B3、B4の発現が亢進することを明らかにしてきた。そこで今回、OSC細胞の形態、増殖、接着、浸潤能などの細胞生物学的特性に対するEphrinB2の影響について検討を行った。【材料と方法】高浸潤能を有するOSC-4細胞にEphrinB2に対するsiRNAをトランスフェクションした後、増殖能を細胞数をカウントするか、もしくは、MTTアッセイを用いることにより検討するとともに、浸潤能および遊走能をTranswell chamber assay法にて検討した。さらに、OSC-4細胞をEphrinB2のリガンドであるEphB2、B3およびB4/Fcキメラの存在下で培養し、同様の検討を行った。【結果】EphrinB2ノックダウン細胞において、細胞増殖能は有意に抑制された。EphrinB2ノックダウン細胞の浸潤能および遊走能、さらには、接着能はコントロール細胞に比べ有意に低下した。一方、EphB2、B3およびB4/Fcキメラ存在下で培養することにより、接着能は増強したが、浸潤能は減弱した。【考察】以上より、EphrinB2はOSC細胞の増殖、接着および浸潤能に関与する因子であることが明らかとなったが、今後、OSCにおけるEphrinB2発現の臨床的意義について検討する必要があると思われる。
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