本研究の目的は、T細胞マイクロキメリズムによって移植片対宿主反応(GVHR)が引き起こされ、その結果口腔扁平苔癬(OLP)とシェーグレン症候群(SS)の両疾患の発症が惹起されるという仮説を証明することである。 1. 男児出産歴のあるOLP患者の頬粘膜生検組織からゲノムDNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いてY染色体特異的配列を増幅検出した。結果、27例のうち6例(22.2%)でY染色体特異的配列が検出された。 2. 1でY染色体特異的配列を増幅検出し得た6例において、FISH法を用いたT細胞マイクロキメリズムの検出を行った。この男児の出産歴があるOLP患者3例の病変部の凍結切片において、FISH法を用いてY染色体陽性細胞の存在が同定できた。しかし、FISH法と免疫組織化学染色の二重染色を用いたY染色体陽性T細胞の同定を進めているが、現在のところその同定が確認された。 3. 研究に対して同意が得られれば、患者本人とご子息(男女問わず)のHLAタイピングを行い、OLP患者のHLA遺伝子解析を行うことで、子供の性別を問わずに、胎児由来の細胞の移入があるかどうかを検討する予定であった。 最終的には、標的抗原が同定されることで、SSやOLP発症のメカニズムを解明できるだけでなく、有効的な治療法も開発できると考えているが、その治療法までは今回至らなかった。
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