研究概要 |
申請者は癌転移抑制因子CD82低発現細胞株h1299にCD82遺伝子を導入したh1299/CD82 transfectantを樹立し、CD82がc-Metと複合体を形成して糸状突起や葉状突起の形成を阻害して癌細胞遊走を抑制することを明らかにした。これらの結果はCD82が癌細胞の浸潤転移を抑制している可能性を示唆しているが、CD82の発現による癌細胞浸潤転移酵素の変動については未だ明らかにされていない。一方、DPP4は細胞膜に存在する膜結合蛋白のCD26であり、生理活性物質のペプチドのN末端にあるX-AlaおよびX-Proを加水分解する膜結合蛋白である。本酵素は細胞外基質やケモカインなどの生理活性物質に作用することから、癌細胞の浸潤・転移や遊走に関与していることが示唆されている。最近、DPP4活性を有し、DPPIVと約60%の相同性を持つ新たなペプチダーゼ(DPP8,DPP9)がクローニングされDPP4遺伝子ファミリーとして分類され、その生理的役割が研究されつつある。そこで本研究では、h1299/CD82transfectantを用いてCD82の発現を伴うCaveolin-1と浸潤転移関連酵素の変動を検討した。 その結果、CD82はDPP4発現を介して(1)DPP9の発現を抑制し、E-cadherin、β-cateninnなどの発現を促進乙細胞間接着を亢進させること、(2)さらに、caveolin-1とDPP9タンパクを細胞骨格分画に誘導することにより癌細胞遊走を抑制することによって癌の浸潤・転移を制御していることが示唆された。
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