癌転移抑制因子CD82/KAI-1はカベオリン-1の存在下で細胞膜表面タンパクとの相互作用により生物学的活性を調節する。DPP4はフィブロネクチンと結合する2型細胞膜貫通型タンパク質で、DPP遺伝子ファミリーのメンバーとして知られており、接着分子として働き、細胞骨格構成成分を調節する。そこで本研究ではCD82発現に伴うDPP遺伝子ファミリー酵素の発現を検討した。ヒト肺非小細胞癌由来CD82低発現細胞株h1299にCD82遺伝子を導入し、CD82強制発現細胞株を樹立した。CD82導入株ではDPP遺伝子のほか浸潤転移関連蛋白の発現に変動がみられた。DPP9はCD82強制発現によって減少し、細胞骨格分画に局在する傾向がみられた。また、DPP9の減少によって細胞接着関連蛋白の発現が上昇した。DPP9は同じ酵素活性を有するDPP4遺伝子ファミリーの中でも機能が異なること、さらにDPP9は細胞骨格蛋白および細胞接着関連蛋白の発現と関連して癌浸潤・転移を制御していることが示唆された。
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