研究課題
若手研究(B)
本研究では、低酸素環境下でのHypoxia-inducible factor-1(HIF-1)の働きと腫瘍血管新生に関与する遺伝子群の解析を行った。口腔癌においてはp53異常を伴う腫瘍が約半数を占めており、特に血管形成の際誘導されるVEGF(vascular endothelial growth factor)の発現が誘導されやすい。研究結果の概要としては1)口腔癌細胞株を用いた実験系では、低酸素状態(1.0%の酸素下)で転写因子であるNF-kBがHIF-1を誘導する事が明らかにされた。2)低酸素領域にある腫瘍細胞に着目し、Laser Capture Microdissection (LCM)にて癌細胞を切り出し、Total RNAを抽出した。その結果COX-2やMMP-1の発現が見られた。3)低酸素領域にある癌細胞の特性を検索する為、放射線治療と抗癌剤同時併用療法後の切除組織における残存組織内での血管新生因子の発現検索を行った。対象は13例の口腔癌とし、研究結果により生検組織におけるHIF-1αの発現陽性は12/13例、VEGFの発現陽性(++/+)は9/13例であった。その発現の程度と化学放射線治療感受性との関連性は認められなかった。生検組織におけるVEGF陽性発現(++/+)症例は、すべてHIF-1α陽性(++/+)症例であった。また手術時の切除組織では、5例中2例に生存癌細胞が認められた。これらの生検組織では、HIF-1αかつVEGFともに強陽性(++)発現を認めた。
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