研究概要 |
口腔癌の治療において,抗癌剤に対する耐性獲得は,臨床上大きな問題であり,今後の重要な課題である。本研究では,耐性獲得に関係する遺伝子発現を解析することにより耐性克服法を含めた診断,治療法の開発を目的として行っている。 新たに樹立したCDDP耐性口腔扁平上皮癌耐性株(H-IR,Sa-3R,KB-R)とそれぞれの親株を対象に,千葉大学臨床分子生物学講座を中心とするグループとの共同研究によりin-house cDNA Microarrayを含めたMicroarray解析を用いてCDDP耐性細胞株における遺伝子発現の変動をそれぞれ検討した。その結果,DNA修復や,アポトーシス,シグナル伝達に関連する遺伝子群の発現変動が確認されている。3種類の細胞株において共通して変動する発現亢進・減弱する遺伝子のうち,何種類かの遺伝子が感受性?耐性を規定する候補遺伝子としてリストアップされた。 候補遺伝子の中から有意差のある遺伝子群(5種類)について免疫組織学的検討を行った。 CDDPを中心とした術前化学療法(CVP2経路動注化学療法)を施行した口腔癌症例の生検時検体30例を対象とした。その結果,発現増強・減弱する遺伝子群ともmicroarray解析の結果とほぼ一致する解析結果が得られた。この結果より,CDDP感受性の予測因子としての遺伝子解析および数種の遺伝子発現を組み合わせた診断方法の有用性が示唆された。現在は,Affpietrix社のGene chipを用い,多数の遺伝子を対象とした詳細な遺伝子発現解析を進めている。
|