歯は上皮由来のエナメル芽細胞、間葉系由来の象牙芽細胞や歯髄細胞、歯根膜細胞などが相互作用を及ぼして形成されていくものと考えられる。したがって、歯の再生を考える上ではまず始めに、歯胚からこれらの性質を備えた細胞を分離し、その細胞間相互作用を明らかにすることが重要なことである。しかし、これら細胞間相互関係を解明するには再現性のある細胞が必要となる。また、歯胚細胞は癌細胞とは異なり正常細胞であるため、増殖能力に限界があり継代していくうちに死滅してしまう。したがって、これらの性質を持った細胞を歯胚組織から分離しても、半永久的に使用することは不可能である。そこで、私たちは細胞の不死化に着目した。 矯正治療のため便宜抜歯が必要と診断された患者から歯胚を取り出し、single cellとして分離し、DNA腫瘍ウイルス(SV40)を導入し不死化ヒト歯胚細胞を樹立した。次に、不死化歯胚細胞をsingle cellにして培養し、single cell coloney形成後、それぞれの細胞集団のmRNAの発現変化について解析し、エナメル芽細胞様、象牙芽細胞様、歯髄細胞様細胞に篩い分ける。上記のように篩い分けた細胞群にサイトカインによる細胞分化増殖への影響を検討するためにFGF-2、BMP-2、BMP-4、ectodinを投与し、アメロゲニン(エナメルタンパク)、ホスホホリン(象牙質リンタンパク質)、プロテオグリカン、I型コラーゲン、アルカリフォスファターゼの発現変化および細胞増殖について検討した。その結果、ホスホホリンの発現が増強している細胞群およびI型コラーゲン、アルカリフォスファターゼの発現が増強している細胞群が確認できたが、歯牙構造物のどの組織を形成しているのかは断定できていないため今後のさらなる研究が必要である
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