近年癌治療は分子標的治療法の導入により大変革を遂げつつある。我々は分子標的治療薬の一つであるゲフィチニブの効果にケモカインBRAK/CXCL14が関与しており、BRAK/XCL14が発現していない癌細胞においてはゲフィチニブが効果を示さない結果を得た。癌細胞でBRAK/CXC14が消失する原因としてプロモーター領域のメチル化が関与しており、メチル化を簡便に特定するための手法の一つとして、メチル化特異的PCR法が挙げられる。我々の目的は、BRAK/CXCL14のメチル化領域の決定を行うことにより、BRAK/CXCL14に対するメチル化特異的PCR法を確立することである。しかしながら、BRAK/CXCL14のプロモーター領域はいまだ報告がなく、メチル化特異的PCR法を確立するためには、まずその領域を決定することが先決である。そこで19年度において、我々はメチル化をうけるBRAK/CXCL14のプロモーター領域の検索を行った。実験手法としては、BRAK/CXCL14の転写開始点を決定するための5'RACE法とプロモーター活性及び領域決定のためプロモーターアッセイを用いて実験を行った。その結果、BRAK/CXCL14の転写開始点は従来報告されていた部分より下流であることが確認され、さらに我々が見出した新たな転写開始点の上流近辺にプロモーター領域が存在することが明らかとなった。19年度の研究成果としては、BRAK/CXCL14のプロモーター領域を決定できたことである。このことは20年度行う予定であるメチル化特異的PCR法のプライマー設計を行うことに寄与し、円滑に実験を遂行できると推測される。
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