研究概要 |
免疫組織学的検討によりリンパ管内皮マーカーであるD2-40抗原が口腔扁平上皮癌細胞において高率に発現していることを明らかにした。比較のために検討した胃癌・大腸癌などの腺癌では1例もD2-40抗体染色陽性例がないことから扁平上皮癌に特異的と考えられた。リンパ管内皮細胞のライセートをD2-40抗体と抗Podoplanin抗体でウエスタンブロットすると同一分子量のバンドが共に染色されることからD2-40抗体のエピトープはpodoplaninと同一と考えられた。最近,大部分が扁平上皮癌である子宮頚癌でこのpodoplaninがリンパ管以外にも頭頚部癌細胞で発現していることが報告されており、今回の我々の観察結果と一致している。Podoplaninは低分化型口腔扁平上皮癌において発現が高い傾向が認められると同時に、正常の口腔粘膜扁平上皮でも基底細胞が陽性であることから,扁平上皮の増殖・分化と関連している可能性が示唆される。しかし現在、Podoplaninの口腔扁平上皮および癌における機能については全くわかっていない。我々は,多数の口腔扁平上皮癌細胞株をFlow Cytometryおよび免疫蛍光染色で検索した結果、Podoplanin発現細胞株を複数株見出している。今後,これらの細胞株を用いてin vitroにおいてその機能解析を行うことにより,腫瘍細胞ばかりでなく、リンパ管内皮におけるD2-40抗原、podoplaninの機能解明が進む可能性が期待できる。
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