研究概要 |
昨年度は免疫学的検討によりリンパ管内皮や中皮細胞マーカーであるPodoplaninが口腔扁平上皮癌細胞において高率に発現していることを明らかにした。比較のために検討した胃癌・大腸癌などの腺癌では50例中1例もD2-40抗体染色陽性例がないことから扁平上皮癌に特異的と考えられた。Podoplaninは低分化型口腔扁平上皮癌において発現が高い傾向が認められると同時に、正常の口腔粘膜扁平上皮でも基底細胞が限局して陽性であることから, 扁平上皮の増殖・分化と関連している可能性が示唆される。しかしこれまで、Podoplanin口腔扁平上皮および癌における機能については殆どわかっていない。我々は多数の口腔扁平上皮癌細胞株をFlow Cytometryおよび免疫蛍光染色で検索した結果、Podoplanin発現細胞株を複数株見出したため、今年度はこれらの培養細胞株を用いてPpdoplininの発現制御機構にろいてin vitroで検討した。その結果、口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3がTGF-betaにより発現誘導されるとを見出した。この発現はTGF-beta濃度および時間依存的で刺激後12-24時間で最大に達しだ。また定量RT-PCRを用いてPodoplanin mR-NAも検討したところ24時間後では約3倍の発現誘導が認められ、転写レベルでの発現調節の可能性が示唆された。現在、TGF-betiによる発現誘導にSMADジグナル経路が関与するか否かを検討中である, 一方、TGF-beatによるPodoplaninの発現誘導にも関わらず増殖への明らかな影響は認めちれなかったことから、増殖以外の機能に関与する可能性が示唆される。Podoplaninが幹細胞マーカーのひとつであるとする報告が昨年度なされており、この点についても今後検討してゆく予定である。
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