われわれは、SCCA1、SCCA2の発現は、TNF-αによる細胞死に対して抵抗性を示すことで、腫瘍形成能を上昇させていることを報告した。また、強制発現細胞群は細胞死誘導時にミトコンドリアからのシトクロムc放出に対して抑制効果を示し、さらにその下流におけるカスペース9活性の抑制を認めた。これらより、SCCA1、SCCA2は細胞死誘導カスケードにおいてシトクロムc放出に対するミトコンドリアへの作用、またその上流の因子に対して作用する可能性があることも併せて報告した。 今年度は遺伝子発現抑制系にて、遺伝子の機能解析を行った。恒常的にSCCAの発現を抑制させた細胞株を樹立するため、アンチセンス法を施行した。その遺伝子の発現抑制はRT-PCRにてコントロ-ル郡と比較し、SCCA発現抑制細胞株を樹立した。この細胞株を用いて、SCCA発現抑制により細胞形態、増殖能に与える影響をコントロール群と比較、検討した。発現抑制群とコントロール群に形態的に明らかな差異は認めなかった。SCCA発現抑制細胞群では、コントロール群と比較して細胞形態、増殖能に変化を認めなかったことより、SCCAは細胞形態、増殖能へは直接的な影響は少ないことが考えられた。現在、遺伝子発現コントロールによる腫瘍形成能への影響(浸潤能、転移能など)を観察中である。また、サイトカインや抗癌剤を用いた細胞の反応、アポトーシス誘導抵抗性などを検討し、機能解析を図る予定である。
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