今年度はSCCA (squamous cell carcinoma antigen)の発現抑制系を確立し、腫瘍形質への影響を検索することを目的とした。SCCA発現ベクターによる発現抑制系が及ぼす培養細胞への影響を観察し、口腔扁平上皮癌の個別化遺伝子治療開発の機転とする。 SCCAにはisoform (SCCA1、SCCA2)があり、各々の機能は詳細に解明されていない。SCCA1、SCCA2各々の機能を解析するため、各々の遺伝子発現を抑制させることにした。SCCA1、SCCA2は相同性が高く(アミノ酸配列・塩基配列で各々95%・92%の相同性)、微細な塩基配列の相違でも発現抑制可能とされるRNAi法を用いることにした。siRNAの発現にはpSilencer^<TM> 1.0-U6 siRNA Expression Vector (Ambion社)を使用した。SCCA1、SCCA2 mRNAのコーディング領域に塩基配列の相違を認める箇所を確認し、siRNAターゲットサイトはSCCA1で4箇所、SCCA2では2箇所設定した。各々のターゲットサイトの相補鎖を含むベクターを作製し、MISK81-5(扁平上皮癌細胞株)にトランスフェクションした。各々のベクターの単一細胞をクローニングして、恒常的にSCCA発現を抑制させた細胞株の樹立を試みた。SCCA2 mRNAに対するsiRNAの導入により、単一クローンを得て、半定量的RT-PCR法にて発現量を確認し、SCCA2 mRNAのみを特異的に抑制した細胞株を樹立した。SCCA1 mRNAに対する発現抑制は確認できず、siRNAターゲットサイトなどを再度追試中である。SCCA2 mRNA発現抑制群とコントロール群に形態的に明らかな差異は認めなかった。SCCA2発現抑制細胞群では、コントロール群と比較して細胞浸潤能に変化を認めなかったことより、SCCAは細胞浸潤能へは直接的な影響は少ないことが考えられた。今後、サイトカインや抗癌剤を用いた細胞の反応、アポトーシス誘導抵抗性なども検討し、機能解析を図る予定である。
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