頭蓋顎顔面領域における疾患感受性遺伝子の特定に関する報告は、先天異常を伴わないものでは、今の所、国内外でわずかである。下顎前突症に関しては、疾患感受性遺伝子は未だ特定されておらず、その存在が示唆される染色体部位についても、連鎖解析の報告が1つあるのみである。骨格性下顎前突症の患者よりゲノムDNAを調製し、下顎前突症の原因遺伝子が全ゲノム領域のどめ位置に座位しているかを明らかにすることを、研究目的とした。今年度はまず、ゲノム倫理委員会の承認のもとに同意・承諾を文書で得られた者(非血縁患者集団)より抽出キットを用いて調製したヒトゲノムDNAを140名分合わせて、pooled DNAを作成した。具体的には、各名のDNA濃度をpico-greenを用いて測定し、140名の濃度を全て同濃度に希釈調整し、それを1溶液とした。このpooled DNAを用いてタイピングすることにより、Individua1タイピングに比べて実験規模・時間・コストの大幅な軽減が期待できる。同様に、非血縁健常者180名分のヒトゲノムDHAを用いたpooled DNAも作成した。続いて、既に設定済みの全ゲノムを約100kbの間隔で網羅する多型マイクロサテライトマーカーを用いて、非血縁患者集団と非血縁健常者集団によるゲノムワイド遺伝的相関解析を補正なしでまず開始した。 これだけの数を用いた、頭蓋顎顔面領域の遺伝子解析は他に例をみないので、相関解析の精度は非常に高く、正確な結果が得られることが来年度に期待される。
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