血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は血管新生や血管透過性を制御し、個体発生時や炎症などの病的状態における、様々な生物学的過程において重要な役割を果たすことが知られている。また、血管新生と骨代謝については、古くから密接な関連性が指摘されており、近年、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)と同様に、VEGFが破骨細胞分化誘導能を有することが明らかにされた。さらに、マウスの実験的歯の移動時における骨芽細胞でのVEGF発現や、VEGF投与により誘導された破骨細胞が歯の移動を促進することが報告され、骨代謝におけるVEGFの役割が徐々に明らかになりつつある。本研究の目的は、VEGFによる破骨細胞誘導におけるシグナル伝達経路の解明を目指してVEGF受容体機能を明らかにすることにある。実験には、培養破骨前駆細胞RAW264.7細胞を用いてVEGFの受容体Flt-1とFlk-1の発現をRT-PCR、およびWestern Blotting法により検討した。その結果、RT-PCR、およびWestern Blotting法により、破骨前駆細胞にFlt-1、Flk-1受容体の遺伝子発現が認められた。 以上の結果から、破骨前駆細胞はFlt-1、Flk-1受容体を発現し、両受容体を介して破骨細胞の分化誘導を行うことが示唆された。
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