血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は血管新生や血管透過性を制御し、個体発生時や炎症などの病的状態における、様々な生物学的過程において重要な役割を果たすことが知られている。また、血管新生と骨代謝については、古くから密接な関連性が指摘されており、近年、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)と同様に、VEGFが破骨細胞分化誘導能を有することが明らかにされた。VEGFファミリーの一つであるrhVEGF-EはFlk-1のみを受容体として機能することから、大理石骨病マウス(op/opマウス)にVEGF-Eの投与を行い、出現する破骨細胞の観察を行った。さらに、VEGF 165の破骨細胞誘導能に与えるFlt-1、およびFlk-1中和抗体の影響を正常マウスを用いて検討した。その結果、以下の所見が明らかになった。 1. rhVEGF-Eの投与により、op/opマウスの大腿骨に多数の破骨細胞の出現が観察された。 2. VEGF 165投与により正常マウスの上顎切歯骨歯根膜内に出現する破骨細胞数は、Flt-1、およびFlk-1中和抗体の投与によって有意に抑制された。また、Flt-1とFlk-1中和抗体の同時投与により抑制が前進し、単独投与群との間に有意差を認めた。 以上の結果から、歯の移動時の歯周組織内においてVEGFとM-CSFの発現が亢進し、破骨細胞の分化誘導を主体とした骨改造に大きな影響を及ぼすことが示唆された。また、VEGFはFlt-1、およびFlk-1両受容体を介して破骨細胞の分化誘導を行うことが明らかとなった。
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