研究課題
平成21年度は、上行性カテコールアミン(CA)作動性ニューロン遮断ラットを用い以下の実験を行った。(1) MD(6-OHDA)群:母子分離(生後1-6日、12時間/日)実施、生後53日目に上行性CA作動性ニューロンに6-OHDA注入、(2) MD(saline)群:母子分離実施、生理食塩水注入、(3) 対照群の3群に対し、生後60日目に30分間の身体抑制ストレスを実施した。採血はストレス開始直前(TO)から30分間隔で180分後(T180)まで計7回行い、RIAによりコルチコステロン(CORT)濃度を測定した。[結果および考察]TO-T30をphase I、T30-T180をphase IIとし、3群間の経時的変化について分析を行った。[phase I]MD(6-OHDA)群のピーク値は他の2群と比較して有意に低値を示した。身体抑制ストレスによるHPA系の活性は他のストレスに比べ非常に強く、過去の母子分離実験においても、身体抑制ストレス直後の急激なCORT濃度の上昇に群間差はみられなかった。今回、MD(6-OHDA)群のピーク値が低値を示したのは、脳幹からの上行性CA作動性ニューロンによるCRH産生細胞の活性促進作用が消失したことにより、結果としてHPA系最終分泌物質であるCORT分泌が抑制されたためと考えられる。[phase II]T180に対照群が基礎値に戻ったのに対し、MD(saline)群は有意に高値を示した。MD(6-OHDA)群もピーク値が低いにもかかわらず、減少は遅く基礎値には戻らなかった。海馬の糖質コルチコイドレセプターは、HPA系におけるステロイドの負のフィードバックを調節している。MD両群のピーク後の減少速度が遅いという今回の結果は、生後初期の母子分離によりMDラットの海馬のステロイドレセプター発現が変化し、HPA系の負のフィードバック機構を低下させた影響と考えられた。
すべて 2010
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The journal of cranio mandibular practice 28(1)
ページ: 19-29