研究概要 |
本研究では、異なる性差のラットを用いることにより、顎関節の細胞外マトリックス(コラーゲンおよびプロテオグリカン)の発現にどのような影響を及ぼしているのかについて解明することを目的としている。 今年度は、次年度の研究計画である性ホルモンの影響による細胞外マトリックス(コラーゲンおよびプロテオグリカン)の発現変化を解析するための予備実験として、ラット顎関節円板におけるレーザーマイクロダイセクションによる遺伝子組織学的検討により、雄性Wistar系ラットを用いて正常ラット顎関節円板のプロテオグリカンの遺伝子発現について検討した。 関節円板は、前方肥厚部、中央狭窄部、後方肥厚部の3つの部位に分られ、デコリン、バイグリカン、ファイブロモジュリン、ルミカン、バーシカンの5種類のプロテオグリカンについて検討した。その結果、牽引力の負荷部位と考えられる前方肥厚部ではデコリン以外のSLRPsのmRNA発現量は成長に伴い減少し、圧縮力の負荷部位と考えられる中央狭窄部、後方肥厚部ではmRNA発現量は類似した様相を示し、バイグリカン、ファイブロモジュリンは8週齢以降増加を示した。 以上のことから,ラット顎関節円板における各種プロテオグリカンのmRNA発現は、領域差を示すことが明らかとなった。このことは、顎関節における生力学的環境の変化が関与していることを示唆している。今後は、性差について、性ホルモンの影響を解明しながら、さらに領域差の検討を行う計画である。
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