今年度は、測定実施に先立ち、申請者の所属研究室において、視覚・触覚刺激に対する児の反応について外部観察記録するシステムの構築を行った。測定室にネットワークカメラを設置し、注視時間、口唇の上下運動等の口腔周囲の運動、泣き声等の音声反応を同期記録が可能となった。得られた情報は、パーソナルコンピュータ上でAvi情報に変換・記録し、理化学研究所所有の行動解析ソフトで分析を行うことが可能となった。光トポグラフィー装置(Hitachi ETG-100)を用いた大脳皮質活動の発達変化の記録は、生後2ヵ月から7ヵ月の乳児5名を対象とし、1カ月に1回の頻度で測定および解析を行った。体動の激しい乳児を対象とした測定において、ノイズの少ない安定したデータを得るための条件設定について検討を行った結果、体位は母親の膝上での抱っこにて座位をとらせ、プローブの固定には新生児用ベビービーニーを使用した場合が最も安定していることが明らかとなった。また、視覚刺激提示時間は連続3分以内であれば、児が泣き出すことなく測定が継続可能であった。視覚刺激実験の結果、3ヵ月児では母親の食事の様子を提示した場合、側頭部の脳血流量が増加する傾向が見られたが、他の母親の画像では変化が乏しかった。4・5ヵ月児では、いずれの画像に対しても血流の増加が見られ、発声、指しゃぶりといった追加行動の発生頻度に差があることがわかった。よって、乳幼児の食育の観点から考えると、母親と食卓を囲むことは、児の食行動の認知発達に何らかの影響があるものと推察された。脳血流増加部位および行動観察に関する詳細な検討については、次年度も引き続き例数を増やしながら進める予定である。
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