研究概要 |
背景:多血小板血漿=(以下PRPと略す)とは血小板を多く含んだ自家血の血餅である。血小板は創傷の治癒の全過程に影響を及ぼすため血小板数の増加が治癒(骨形成)を促進する。現在PRPは骨形成の促進、組織の代謝活性といった特性が注目され、移植、インプラント植立、美容医学といった分野にまで幅広く応用されているが、歯科矯正分野においてはPRPの応用は現在のところほとんどない。しかし歯の移動のメカニズムは骨の吸収と形成の繰り返しで行われており、PRPはこの骨改造を効率よく作用させることが可能となる。骨改造の効率化はそのまま歯の移動の急速化へと繋がる可能性がある。目的:本研究は矯正治療でのPRP応用の可能性を特色として、特に(1)矯正治療期間の短縮(2)矯正治療前後での歯槽骨レベルの変化(3)矯正治療に適したPRP使用法の確立の3点を臨床目標とし、具体的には(1)骨のリモデリング(歯の移動)におけるPRP効果の解明(2)PRP投与による歯の移動後の歯槽骨形成の動態解明を初年度の基礎研究目標とした。方法: Wister系ラットを用いて歯の移動モデルを作製し、PRP投与群とコントロール群(生理食塩水投与)とにわけて、歯の移動1, 3, 7, 14日後の歯の移動量と移動周囲の骨の形態学的影響と骨形成の動態について光顕およびマイクロCTにて分析し、グループ別に比較検討した。結果:歯の移動側においてPRP群がコントロール群に比べて早期に歯の移動と破骨細胞の出現が認められ、牽引側においても早期に骨形成が開始した。7日例においてはPRP群は有意に歯の移動量が多く14日例において有意差はみとめられなかった。考察及び結論:以上の結果よりPRP群はコントロール群に比べ骨代謝が促進される傾向があり、PRPは歯の移動の急速化に効果がある可能性が示唆された。今後は引き続き骨形成の動態と中でも破骨細胞の分化誘導因子組織学的変化について検討していく予定である。
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