研究概要 |
これまでの研究で、ELマウスの染色体3番の特定領域のみを、正常な歯列を持つMSMマウスの染色体と置換したコンジェニックマウスを作製し、染色体3番の中間領域にマウス先天欠如歯の原因遺伝子が存在することを証明し、この範囲をam3領域と名づけた。しかし、am3領域の長さは約5メガベースペア(Mb)あり、原因遺伝子の候補となる遺伝子は40を超えていた。平成19年度はコンジェニックマウスにELマウスを交配することにより、am3領域内で染色体組み換えを生じさせ、その子孫に歯の欠如がみられるかどうかを観察することにより、am3領域をさらに狭い範囲に限定することを目的とし、am3領域をセントロメアより131-132Mbに限定し、候補となる遺伝子をLef1, Hadh, Cyp2u1, Sgms2, Papss1の5遺伝子に限定することができた。 H20年度はELマウスに生じる第三臼歯欠如の原因であるam3の候補となったLef1, Hadh, Cyp2u1, Sgms2, Papss1の5遺伝子に遺伝子変異があるかどうかを検索した。各遺伝子の全てのエクソンを増幅するためのPCRプライマーを設計した。PCRにて五遺伝子の全てのエクソンを増幅後、ダイレクトシークエンス法にて、塩基配列を決定し、対象と比較し遺伝子変異があるかどうかを調べた。その結果、Lef1, Cyp2u1, Sgms2, Papss1ではエクソン配列はコントロールと完全に一致し、遺伝子変異はなかった。Hadhのエクソン4に一塩基変異を認めたが、アミノ酸に変化のない変異であった。この結果より、ELマウスに生じる第三臼歯欠損は、これら5遺伝子のエクソン内の変異が原因ではないことが明らかとなった。また、このことより遺伝子調節領域あるいはイントロンの多型が原因である可能性が示唆された。
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