【目的】 歯周炎は感染や炎症により骨を含めた歯周組織破壊の起こる疾患である。これまでの研究から炎症に伴う骨破壊には破骨細胞が必要であり、この破骨細胞の分化には破骨細胞分化因子(RANKL)によるシグナル伝達が必須であることが報告されている。我々はこれまでの研究より歯周炎組織から樹立したT細胞クローンにおいてRANKLのmRNA発現があることを確認している。そこで今回フローサイトメトリーによる解析を行いRANKL分子と、またRANKLを発現し骨組織破壊促進作用を持つと報告されてきているTh17細胞に関する分子の発現を検索することで歯周炎組織における骨破壊機構を解明することとした。 【方法と結果】 インフォームドコンセントの得られた慢性歯周炎患者より歯肉組織を採取、単核細胞を分離し培養後、磁気分離法にてCD4^+T細胞ライン(GTライン)を樹立した。比較対象として同一患者の末梢血より同様の方法で末梢血由来CD4^+T細胞ライン(PBライン)を樹立した。これらのラインにおいてTh17を含むT細胞サブセット関連分子および骨吸収関連分子の発現をフローサイトメトリーにて解析した。結果、IFN-γ陽性細胞率は平均するとGTラインがPBラインより高い傾向であったのに対し、IL-4ではGTラインがPBラインよりも低い傾向にあった。IL-17陽性細胞率は平均するとGTラインのほうがPBラインよりも高かったがこれはGTラインの1つでIL-17陽性細胞率が特に高いことが影響した。RANKLの発現はPBライン、GTラインの両方で認められた。これらのことから歯周炎組織中には破骨細胞分化を促進させるRANKL^+細胞とTh17細胞が存在し、これらの細胞が歯周炎組織における骨破壊に関与している可能性が示された。
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