研究概要 |
歯周病原性細菌を作用させた歯周組織由来細胞はその由来によってS100タンパク質の発現パターンが異なっていた。例えば、歯肉上皮細胞ではS100P, A1, A3, A7, A8, A9, A12, A13の発現を確認した。一方で、歯周靭帯由来線維芽細胞ではS100P, A1, A3, A8, A9, A13の発現を確認した。さらに、歯周靭帯由来線維芽細胞ではS100タンパク質のレセプターであるReceptor for Advanced Glycation End Productsの産生が認められなかったのに対し歯肉上皮細胞ではその産生が確認できた。S100タンパク質が歯周組織由来細胞の炎症性サイトカイン産生へ及ぼす影響では、S100タンパク質を歯肉上皮細胞に作用させるとIL-8 mRNAの発現が誘導された。健常ラットおよび歯周炎モデルを用いたS100タンパク質産生の比較では、歯周病モデルラット炎症性サイトカイン産生およびS100タンパク質の発現が健常ラットと比較して増加していた。in vitroにおいて歯周組織由来細胞のS100タンパク質産生をマレイン酸イルソグラジンが抑制した。同様にin vivoにおいても歯周組織由来細胞のS100タンパク質産生がマレイン酸イルソグラジンの全投薬によって抑制された。このことは、歯周炎の初期段階でS100タンパク質が発現し、その影響によって炎症が憎悪する可能性があり、また、マレイン酸イルソグラジンはS100タンパク質の産生抑制によってその憎悪を抑制する効果あることが示唆された。
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