研究概要 |
歯周炎はプラーク中に含まれる歯周病原性細菌により惹起される慢性炎症性疾患でT細胞などの免疫担当細胞と線維芽細胞との複雑な相互作用によって病変が形成されているが報告されている。ケモカインはサイトカインの一種であり、炎症性細胞などの遊走、浸潤に関与していることが報告されている。その中の一つCXCL16はT細胞の遊走に関与していることが報告されているが、歯周炎での発現ならびにその役割については明らかとなっていない。本研究ではCXCL16ならびにそのレセプターであるCXCR6に着目し、歯周炎病変局所でのCXCL16およびCXCR6発現の解析、ならびに歯周組織の主な構成細胞の一つであるヒト歯肉線維芽細胞(HGF)のCXCL16産生の解析を行った。 免疫組織化学的解析により歯周炎病変局所においてHGFはCXCL16を発現しており、同一部位にCXCR6陽性炎症性細胞が浸潤していることが明らかとなった。HGFのCXCL16産生は炎症性サイトカインであるIL-1beta,TNF-alphaならびにTh1関連サイトカインであるIFN-gammaにより濃度依存的に増強された。また、IL-1betaが誘導したCXCL16はTh2関連サイトカインであるIL-4ならびにIL-13により抑制された。さらに、シグナル伝達物質であるp3 MAPK, ERK, JNK, PI3KならびにNF-kappaBがHGFのCXCL16産生に関与していることが明らかとなった。 これらの結果より、歯周炎組織中においてHGFのCXCL16産生は様々なサイトカインによりコントロールされていることが明らかとなった。また、CXCL16はT細胞浸潤に関連していることより、歯周炎病変局所において多くのサイトカインによってT細胞浸潤は調節されていることが示唆された。
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