本研究計画は、歯周病と生活習慣病の関連性を解明するための1つの手段として、脂肪細胞の分泌するアディポネクチンが歯周組織細胞に及ぼす影響を検討することであった。 循環血中のアディポネクチンは健常者では高濃度で存在するが、肥満により減少することが知られている。この知見より、アディポネクチンの濃度依存的に炎症状態にある歯周組織由来細胞の炎症性サイトカイン分泌が抑制されると予想した。しかしながら、前年度から引き続き得られた結果は、アディポネクチンにより歯周組織由来細胞からのIL-6やIL-8の産生は抑制されることはなかった。MMPs活性についても同様であった。そこで、歯周組織由来細胞とマクロファージに分化させたヒト単球様細胞U937の共培養系を確立し、そこでのアディポネクチンの影響を検討した。ELISA法を用いて検討した結果、アディポネクチンの濃度依存的に抗炎症性サイトカインであるIL-10やIL-1raの産生の亢進が確認された。 以上のことより、歯周組織由来細胞に対するアディポネクチンの直接的な抗炎症作用はないことが示唆された。しかしながら、アディポネクチンはマクロファージに対してIL-10やIL-1raの産生を亢進させ、それが歯周組織由来細胞とU937マクロファージの共培養においても確認された。このことは成人の8割以上が罹患しているといわれている歯周炎が、ほとんどの場合慢性的に経過することの証明となる可能性がある。 本研究はさらなる検討が必要であると考え、詳細な解析を進める。今後そこで得られた成果を公表していく予定である。
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