確実で予知性の高い歯周組織再生療法は未だ確立していないが、過去の研究結果は、ex vivoで増殖させた歯根膜細胞やそこから分取した組織幹細胞を用いた組織再生療法の有効性を示唆している。また、多くの組織・臓器での存在が確認されているSide Population(SP)細胞分画には多臓器に分化可能な最も未熟な組織幹細胞が存在すると考えられ、最近、培養ヒト歯根膜細胞中にもSP細胞分画が存在することが報告された。しかしながら、この歯根膜SP細胞はヘテロであるため、実際この細胞中に組織幹細胞が存在しているかは明らかではない。そこで、本研究では培養ヒト歯根膜細胞中に存在するSP細胞から純化した組織幹細胞を用いた歯周組織再生療法の確立を目指し、培養ヒト歯根膜細胞中に存在するSP細胞の特徴を明らかにした上で、この歯根膜SP細胞中からの組織幹細胞の純化を試みた。その結果、(1)培養ヒト歯根膜細胞中にSP細胞が存在することを確認した。(2)SP細胞が特徴的に発現している既知および未知の遺伝子の網羅的解析をマイクロアレイにて行った結果、SP細胞ではSP細胞以外のMain Populaton(MP)細胞と比べて幹細胞マーカーであるCD73の発現が高く、一方でMP細胞ではSP細胞と比べてpro-alpha-1 type 3 collagenや歯根膜マーカーであるPLAP-1、Periostinの発現が高かった。現在、SP細胞における多分化能の検討をin vitroにて行っており、次年度はSCIDマウスの皮下にSP細胞とハイドロキシアパタイト顆粒とのペレットを移植し、in vivoにおける多分化能検討を行う予定である。
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