研究概要 |
本研究の目的は、新たな幹細胞源としてヒト臍帯動・静脈周囲に存在する未分化間葉系幹細胞を用いた次世代のオーダーメイド歯周組織再生療法へ展開するための基礎データを得ることである。 今年度は、鶴見大学歯学部倫理委員会の審査と承認のもと、連携医療機関で書面にて同意の得られた被験者より臍帯の提供を受け、その基本特性、骨分化誘導について検索し、以下の結果をえた。 1. トロント大学のグループが開発した方法に従い、得られた臍帯より臍動・静脈を取り出し、コラゲナーゼ処理により初代細胞 (PO) を得た。この間葉系細胞を増殖培地(15%FBS, 167units penic illin G, 50μg/ml gentamicin, 0.3μg/ml amphotericin Bを含有するα-MEM) にて培養を行った。1週間ごとに継代操作を繰り返し、増殖率、蓄積分裂回数を10継代まで求めた。増殖速度は2〜4継代で高く、最大で11倍であった。3ヶ月以上の長期培養を実施した結果、全ての検体で細胞老化を認め、異常増殖は認められなかった。 2. POの細胞を骨分化誘導試薬(50μg/ml ascorbic acid, 10M/1 β-glycerophosphate, 10^<-8>M/l dexamethazone) を添加したFull supplement α-MEMにて培養し、5継代の細胞からtotal RNAを抽出後PCR templateを作製し、RT-PCRにてI型コラーゲンならびにオステオカルシンの遺伝子発現を確認した。またアリザリンにより濃染を認めた事から、本研究で用いた細胞は骨形成能を有することが明らかになった。 臍帯由来間葉系細胞は、MHCクラスI、IIともに発現しない細胞を有することから、今後他家移植応用をめざし検索を行う予定である。
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