ヒト口腔上皮ガン由来の株化細胞SCC-25を用いて、タバコ煙が細胞からの抗菌ペプチドの産生に及ぼす影響を調べた。SCC25は80%コンフルエントの状態で継代、2日間培養後、実験に使用した。抗菌ペプチドを誘導するための刺激には、Porphyromonas gingivalisの生菌を使用した。実験群にはタバコ煙抽出液(CSE)を1/40量加え培養した。8時間、24時間後に細胞を回収し、リアルタイムPCRにてヒトβ-difensin-1、-2、それぞれの発現量を比較した。その結果、difensin-1、2いずれにおいても、Pg刺激により発現が増加し、その増加はCSE添加にて抑制された。同時に、IL-8、TNF-αなどのサイトカイン発現についても解析を行ったが、目立った変化は確認されなかった。 これらの結果より、喫煙が口腔上皮からの抗菌ペプチド産生に影響を及ぼす可能性が示唆された。このことは、歯周病に対して喫煙がリスクファクターとして作用するメカニズムを理解する上で、喫煙が歯周病関連細菌の定着に及ぼす影響が重要な因子であることを示しているといえる。今後、CSEにより抗菌ペプチド産生が抑制されるメカニズムについて、Toll様レセプターを介した細胞内伝達系へCSEが与える影響を調査するなど、更なる解析を行い、詳細に検討を加えていく予定である。
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