研究概要 |
すでに抗てんかん薬フェニトイン、ゾニサミドあるいはバルプロ酸ナトリウム慢性投与で引き起こされる薬物誘発性骨減少症モデルラットの実験系を用いて、抗てんかん薬カルバマゼピン(以下CBZ)の慢性投与が骨代謝に与える影響について、骨密度を指標として検討した。4週齢雄性wistar strain ratを用い、それぞれvehicle(0.5%tween80), CBZ25mg/kg, CBZ50mg/kg, CBZ100mg/kg, CBZ200mg/kg, CBZ400mg/kgと設定し一日一回、背部皮下注にて投与し、期間は35日間とした。飼育終了後、過剰麻粋により致死させた後、脛骨を摘出し、軟X線写真撮影を行い、その解析により骨密度の算出を行った。 その結果、CBZの慢性投与により、脛骨海面骨的領域において、対照と比較して有意の骨密度の増加を認めた。増加率はCBZ25mg/kgで19%、 CBZ50mg/kgで29%、 CBZ100mg/kgで23%、 CBZ200mg/kgで16%であり、CBZ投与による骨密度の増加はCBZ50mg/kgでピークとなったのち、以後は用量依存的に減少した。本実験系ですでに検討した抗てんかん薬フェニトイン、ゾニサミド、バルプロ酸ナトリウムは骨密度の減少を来たしたがCBZにおいては増加することが明らかになった。この事実は、薬物誘発性骨減少症を考察する上で極めて有用な情報となり、どのような薬物が骨量を減少させ、また、今回検討したCBZの、どの構造あるいは作用機序が骨量を増加させるのかを明らかにすることで新たな骨代謝改善薬としての可能性を持つものである。 また、カルバマゼピン400mg/kgの群において、飼育開始後の体重増加が著しく抑制されたため、飼育開始後7日をもって当該群のエンドポイントとした。
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