IGF-Iは、下垂体より分泌される成長ホルモンの影響下に、主に肝臓の成長ホルモン受容体を介して産生され、種々の組織の成長促進作用を有する。IGF-Iと骨や筋肉との関係として、IGF-Iは骨芽細胞、軟骨芽細胞の分化・増殖を促進し骨成長を誘導すること、衛星細胞依存性の筋肥大や筋芽細胞の分化・増殖を促進し筋線維の肥大を誘導することが知られている。本研究においては、顎口腔領域におけるIGF-Iの作用を解明することを目的に下顎骨と舌の形態および組織学的変化について検討した。 実験動物は10週齢Wistar系ラットを用い、IGF-I群にはIGF-I製剤を、対照群には生理食塩水を背部皮下組織に4週間持続投与した。投与中止直後に下顎骨および舌を摘出した。軟エックス線装置を用いて下顎骨の側方向規格写真を撮影し、下顎骨の形態学的変化を計測した。舌の形態学的変化として舌体部重量、病理組織学的変化として、HE染色標本上で筋線維束の幅、細胞間隙/筋線維束の比率、上皮の厚さを測定した。 本年度の研究成果として、ラットへのIGF-Iの持続投与により、下顎骨は歯列弓の幅が大きくなり、また下顎頭の長軸方向と下顎骨前後方向に部位特異的に過成長していることが明らかとなった。さらに、舌体部重量が増加し、組織学的に筋線維束の幅および細胞間隙、上皮の厚さが増大していることが明らかとなった。この舌肥大が、下顎骨の形態学的変化をひき起こしていることが示唆された。
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