本研究は歯周病原性細菌の一つであるFusobacterium nucleatum(F.nucleatum)特異的な唾液sIgA抗体に注目し、舌苔成熟に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。唾液は口腔の局所免疫を担う重要な物質であり、特に唾液中のsIgAは口臭の主要な発生源である舌苔に生息する細菌に対して強い影響を与えていると考えられる。また、F.nucleatumは舌苔成熟の中心的存在と考えられ、これを特異的に排除することができれば、舌苔成熟を抑制し、口臭の発生を阻害する可能性が考えられる。本年度は本研究に同意が得られた者から安静時唾液および舌背部より舌苔を採取するとともに、呼気中の揮発性硫黄化合物濃度をガスクロマトグラフィーやガスセンサーによる測定、官能試験を行い、口臭レベルの判定を行った。舌苔および唾液中のF.nucleatum菌数をリアルタイムPCRを用いて測定するためもに、16SrRNAを標的とレた検量線の設定を行った。嘩液中sIgA濃度をサンドイッチELISA法により、濃度既知のヒトsIgAを用いた測定の手法を確立した。純粋培養したF.nucleatum菌体を超音波破砕、抗原としたELISA法にてF.nucleatum特異的sIgA抗体価の測定を行うための条件設定のための予備実験を行った。また、Bio-Plexサスペンションアレイによる唾液中のマルチサイトカイン測定の手法を確立した。また、唾液コルチゾール、分泌型IgA、クロモグラニンAを測定することで、口臭患者における唾液ストレスマーカーの評価を行った。本年度に得られたこれら結果および手法を用いてζ次年度にサンプルの測定、解析を行う。
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