我々が今までにおこなってきたスクリーニングによるデータベースを利用して、成熟期エナメル芽細胞に特異的に発現する分子候補として、まずアネキシンa2を選択した。この分子が、実際に成熟期エナメル芽細胞に発現しているかどうか確認するため、pEF6/V5-His-TOPOベクターを用いて真核細胞発現ベクターの構築を行い、歯原性上皮細胞株(mDE6)に遺伝子導入をおこない、安定発現細胞株を作成した。この細胞中のmRNAレベルでの様々な分子の発現量の違いをマイクロアレイで解析した結果、アネキシン2過剰発現細胞で増加していたmRNAはkeratin comples 1 acidic gene-15、カルシトニン、FGF14、減少していたmRNAはBMP15、タイトジャンクションの接着因子であるclaudin-12、FGF20などであった。アネキシンa2タンパクの発現を、マウス上顎切歯のパラフィン切片を用いて、免疫染色を行い解析した結果、前分泌期には認められなかったが、分泌期に発現し始め、徐々に発現量が増加し、成熟期後期に最も発現が多く認められた。アネキシンa2は、酵母を用いたtwo hybrid法により、エナメルマトリックス蛋白のひとつであるエナメリンと結合することが明らかとなっている。しかしながら、実際のエナメル質の成熟過程において、分解吸収されるエナメルマトリックスと組織内で共局在するかどうか明らかとなっていない。そこで、現在、アネキシンa2とエナメリンとの局在を免疫組織染色により解析中である。今後は、アネキシンa2以外の分子についても解析を進めていく予定である。
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