口腔に衛生的・機能的問題を有する要介護高齢者が多い。平成18年度から施行された介護予防制度の中に位置づけられた「口腔機能向上」施策は、それが適切に運用されることで、機能低下の予防や、食をはじめとする生活の質の向上に大きく寄与する。しかしながら、その実施体制やリソースには問題が依然として多い。本年度は、1サービス事業所において、口腔機能向上プログラムに参加した29名を対象に、事前事後での口腔機能の変化を調査する一方で、これらの参加者がどのようなプロセスでプログラムの参加に至ったかを調査した。その結果、口腔機能向上プログラムの参加に該当する特定高齢者の要件となる基本チェックリストの項目(13<かたいものが食べられるか>、14<むせの有無>、15<口の渇きの有無>)の該当者数は、サービス提供後においては減少し、おおむね改善することが明らかとなった(項目13:25名→5名、項目14:22名→11名、項目15:20名→14名)。また、参加者は、近隣の6つの地域包括支援センターから紹介されており、各地域包括支援センターには、その地域にある病院・診療所において住民基本健診を受けた際に記入した基本チェックリストのデータが判断材料として有効に活用されていた。その一方で、1地域包括支援センターに聞き取り調査を行ったところ、特定高齢者に該当する人であっても、プログラム参加に至らない人が半数以上を占め、その理由としては、・歯科にかかっているから必要なし・あまり困っていない・年寄り扱いしないでほしい・外出したくない・体調がおもわしくない、等であった。
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