今年度は、歯科医療と介護福祉領域の接点の問題を明らかにすることを目的に、S市内の地域包括支援センターと介護予防サービス事業所を対象に、特定高齢者施策介護予防「口腔機能向上サービス」に関するアンケート調査を実施し、23か所の地域包括支援センターと、8か所のサービス事業所から回答を得た(回収率56%、66%)。地域包括支援センターでは、平成19年度に口腔機能向上サービスの利用に該当する特定高齢者は平均18.7人(最多55人)、実際にプランを作成して口腔機能向上サービスを利用した人は平均3.0人(最多11人)であった。サービス事業所では、平均10.4人(最多29人)が利用していた。サービス提供者として歯科関連職種が関わる事業所は4か所であった。また、近隣の歯科医療機関との連携状況については、「良くない」・「全くない」との回答が地域包括支援センターで48%、サービス事業所で75%であった。地域において「口腔機能向上サービス」のしくみが機能することで、その潜在的問題(疾患)が発掘され、歯科医療の既存のリソースを活かした幅広い医療福祉サービスが実現される6例えば、フィンランドにおいては、地域の歯科医療システムが、拠点となる自治体の保健センターを中心として提供されており、その公的サービスを補う形で、開業歯科医が存在している。そして公的サービスは、歯科医療も含めて医療福祉の分野において一元的である。日本では、保健所や市町村保健センターの機能が乳幼児の歯科保健指導や歯科検診事業に偏っており、新たに創設された「地域包括支援センター」の機能において、口腔機能向上サービスと歯科医療が円滑に結ばれることが理想と考えられる。
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